2009年にTDMがフォーカスした若き才能の持ち主Soheyは、いま、ジャネット・ジャクソンのサポートやマドンナのワールドツアーを周るトップクラスのダンサーに上り詰めていた。一流の舞台をくぐりぬけ、挑み続けてきた彼の姿はあの頃から立派に映ると同時に、あの時と変わらない純粋にダンスを愛する1人のダンサーとして、笑顔で語ってくれた。女王・マドンナの人間性や、自己実現のための心の在り方など、貴重なエピソード満載のインタビュー。
- Sohey
2003年、16歳の時に本格的にストリートダンスを始め、完全にその世界にのめりこむ。ユニット、チームを自らつくり、主に地元旭川や札幌を拠点に活動。高校卒業後の2007年、単身渡米してからは、年中快晴のロサンゼルスにてダンスと英語の修行に明け暮れる。2008年、当時ブリトニー•スピアーズの振付師だったアンドレ・フエンテスに実力を認められ、ブリトニー本人のアシスタントとして日本に凱旋帰国。2010年、アメリカで働くことができる念願の“アーティスト・ビザ”を取得。かつての夢だったジャネット・ジャクソンのバックダンサーとして起用される。それ以降も、さまざまなアーティスト(ジャスティン・ビーバー、ジェイソン・デルーロ、アッシャー等)、テレビ番組、TVCMなど幅広く活動。2011年にはブリトニーのワールド・ツアーで北米、ヨーロッパ、中東、南米と世界中を回る。2012年、ダンスクルー Fanny Pak (ファニー・パック)の一員として アメリカのダンス番組“America’s Best Dance Crew” に出演。独特のスタイルと振りつけで全米を魅了し、見事5位に入賞する。その他にダンス講師としても世界中でワークショップを展開するなど、精力的に活動している。2013年からは再びブリトニーのバックダンサーに抜擢され、ラスベガスにて行われているショー、“Piece Of Me” に参加。2年間のロングランで、世界各国から訪れるファンを魅了。2016年現在は、今度はMadonna のバックダンサーとして”Rebel Heart Tour” と共に世界を回っている。2月には、そのツアーで念願であった凱旋帰国も果たす。
■ビッグチャンスを掴んできたSoheyストーリー。
TDM | : | 前回インタビューしたのが7年前でしたね。あれからやってきたお仕事の紹介をしていただけますか? |
TDM | : | ワールドツアーは、どういう形でやったんですか? |
Sohey | : | まず北米、それからヨーロッパ、南米を7~8ヶ月くらいかけて周った感じです。その間、家にはずっと帰りませんでした。 |
TDM | : | 7ヶ月間ホテルですか? |
Sohey | : |
はい。日本のツアーって週末だけで平日は家に帰ったりしますよね。だけど、アメリカはずっと出っぱなしで家に帰らないんです。ブリトニーが2011年に終わって、その次にMTVのダンス番組でクルー同士が対決する「America’s Best Dance Crew」にFanny Pakというダンスクルーで出演してました。それが2012年ですね。その後、またブリトニーが今度は、ラスベガスでショーをするということになって、それもオーディションを受けて、2年契約でやることになりました。ラスベガスにシアターを作って、そこで2年間やるショーでした。ただ、ぶっ続けじゃなくて、まず1ヶ月ショーがあって、その後2ヶ月休み、そしてまた1ヶ月ショー、というような内容だったので、オンとオフがわけられて、断然気は楽でした。でも、その2年間の契約が終わる前、2015年の5月くらいに、マドンナ(Madonna)から声がかかったんです。そこで、ブリトニーを離れて、今年3月までマドンナのツアーを周っていました。 |
TDM | : |
マドンナのオーディションも受けていたんですか? |
Sohey | : |
いえ。たまたま本人がYouTubeを見ていて、僕を見つけたらしく、それで直接オファーが来たんです。最初はテレビ番組に出る仕事で、たまたまその時ブリトニーがオフの時期だったので、その仕事を受けたんですが、その時に気に入られて、「ツアーに来ないか」という話になりました。ブリトニーの契約もあるけど、どうしようかと迷う中で、マドンナのツアーに行くことに決めました。 |
TDM | : |
ブリトニーと契約をしていたのに、オフの時にマドンナの仕事はOKだったんですか? |
Sohey | : | 契約にもよるんですけど、ブリトニーの契約は、オフの時期には何の仕事をやってもOKという内容だったので、テレビの仕事はできたんです。ただ、マドンナのツアーを選んだということで、2年契約を途中で辞めることになり、申し訳ないことをしました。でも、ちょうどマドンナのツアーでラスベガスに行った時にブリトニーのショーを、今度は客として客として観に行ったんです。もちろんマドンナのクルーも全員連れて。辞める時に申しわけなかった気持ちと、やっぱり後ろめたい気持ちもあったんですよね。だけど、その時に、本人がステージに上げてくれたんです。それはすごく感動的でしたね。「これでよかったんだな」と思って。モヤモヤが晴れて、節目としてちゃんと一区切りできたな、とその時思いました。 |
■個性豊かなダンサー達の中で“目立ってなんぼ!”
TDM | : | お話を聞いていると、本当に素敵なアーティストに恵まれる機会がめぐって来ていらっしゃると感じます。 |
Sohey | : | そうですね。まず、ツアーで世界を周って、違う土地、知らぬ土地に連れて行ってもらえるということに日々すごく感謝していました。あと、今回のツアーのダンサーは国際的なメンツばかりなんです。文化が全然違う人たちとずっと1年間一緒にいるので、良くも悪くもすごく違いが感じられるんですよ。それはすごく勉強になります。 |
TDM | : |
例えばどんな違いですか? |
TDM | : | マドンナに選ばれているダンサーは、彼女自身もダンサーをアーティストとして捉えていると聞いています。今回のツアーダンサーは何人編成でしたか? |
Sohey | : | 20人ですね。そのうち日本人は、AyaBambiのAyaとBambi。あと和田マリアちゃんと島津藍ちゃんとぼくの5人でした。Ayaちゃんは実は7年前くらいから知っていて、まだお互いビザがなかった時代から一緒に頑張ってきた仲間です。日本に帰った途端、ドカーンと大ブレイクして、すごいなと思ってました。そこに更にBambiも加わって、彼女達のあの独特の世界は誰でも見入ってしまいますよね。ダンサーだけじゃなくて一般の人から見ても、ものすごくキレもあるし魅力的。リハの時もずっとあんなファッションだしおしゃれでカッコよくて大好きです!和田マリアちゃんも昔から知っていて、ロスでいろんなショーに一緒に出てたり、ブリトニーのツアーも一緒に周った仲間です。すごくスタイルがよくて、丁寧で、ラインがきれいな素敵なダンサーです!島津藍ちゃんも、ビヨンセとかブランディとかいろんなアーティストやっていて、本当に可愛いし、踊りもすごく上手。ジャンルを問わず、バレエのトレーニングもしていて、何でもできる子です。そしてあんな容姿とは裏腹に実はすごくおもしろいんです!(笑) |
TDM | : | そんな素敵なメンツの中で、Soheyくんの強みはどういうことで出されていますか? |
Sohey | : |
愛想ですかね…冗談です(笑)。でも、「楽しそうに踊るね」とよく言われます。それが伝わりやすいんですかね。実際、いつも本当に楽しくてやっているんで。ただ、“目立ってなんぼ!”は意識しています。見られることが好きなんでしょうね。でも、それは心がけているというか、自然になっているんだと思います。「あ、見られているな」と感じると気持ちがいいんです。あとは自然に見ている人の目をひく技です。ただ、人と違うことばっかりやって目立とうとしているんじゃなくて、いやらしくすぎないバランスですかね。目を自然に引かせる技…何なんでしょうね。難しいですね(笑)。 |
TDM | : |
その技は日常の、自分のキャラクターか沸き出るものかもしれませんね。 |
Sohey | : |
そうですね、それが個性ですかね。でも、今のダンサーはみんな個性ありますよね。たぶん、インターネットでいろんな人からの影響を受けているから。YouTubeでダンスを習える時代ですしね。ぼくは、いつも笑っていますね(笑)。笑顔って大事ですよね。 |
TDM | : | SoheyくんのInstagramでは素敵な笑顔の写真いっぱい配信されていますしね。この鎧を着ている時はどういう演出でしたか? |
Sohey | : | 日本人が5人いるということで、マドンナもそれにインスパイアされて、演出も日本風にアレンジしたセクションがあるんですよ。それで、衣装も侍みたいな感じでした。 |
TDM | : | この飛んでる写真は? |
Sohey | : |
これは僕の登場シーンです。 |
TDM | : |
このマドンナと映ってる写真はいつですか? |
Sohey | : | これは彼女の誕生日ですね。毎年誕生日パーティーはテーマを決めて、自宅に招待してくれるんです。今回はテーマがジプシーで、ジプシー的なみんな衣装を着て、ライブショーとかもあったんですが、それ用のダンサーが雇われたりしてて、すごかったですよ。 |
TDM | : | この素敵なバッグは? |
■女王マドンナのハイレベルなこだわりと人間性。
TDM | : | マドンナはどういう風にショーを作っていくんですか? |
Sohey | : | 普通、ツアーのリハーサルはナンバーごとに作って、後から順番に並べていくんですけど、マドンナの場合は、コンサートの順番で作っていくんですよ。オープニングから作っていって、そのオープニングが終わったら2曲目を作って3曲目…全部コンサートのセットリスト順にリハーサルをしていくんですよ。それはすごく新鮮でしたね。 |
TDM | : | 演出はマドンナがやっているんですか? |
Sohey | : | 全部彼女がやっています。何に関しても彼女が認めないとOKじゃないので。最後の最後に彼女が見て、「これでOK」にならないとダメなんです。でも、大抵一回ではOKにならないんです。彼女からちゃんと要望を聞いて、直して、もう一回やって、その次にもう一回やって、全部彼女が的確な指示を出します。本当にすごいです。曲、照明、衣装、ダンス、髪型、メイク、全部です。びっくりするくらい全てに関わって、「これがマドンナか!」と思いましたね。もうかれこれこの世界で32年くらいやってると思うんですけど、どんなに年数がたっても、絶対手を抜かない。さらに、常に世界に目を向けてますね。ぼくが雇われたように、YouTubeも見てたりとか、AyaBambiもメディアで話題になってたのを引き抜かれたな感じなので。まさに、本物のアーティストだと思います。尊敬してます。だからこそ、一回一回を大事にかみしめてやろうと思って臨みました。 |
TDM | : | この子どもたちとの写真は? |
TDM | : |
素敵な経験ですね。こちらの象は? |
Sohey | : |
これはタイで、個人で行きました。いろんなところを観光できるのもツアーのいいところ。この施設は長年観光の現場で働いてきた象たちが自然に暮らせる施設です。そういう象たちを引き取ったり、怪我している動物たちを引き取って、治療して自然にまた帰すという活動をしていました。そこで働く人たちの話もたくさん聞けて、すごくインスパイアされましたね。 |
■目標を紙に書き、逆算し、実行する。
TDM | : |
本当に、世界で活躍している日本人が、日本のダンサーがたくさんいることが結構普通になってきたのもすごいです。そんなダンサーの才能で、今後素敵なものがいっぱい世に出てくるんだろうなと思います。 |
Sohey | : | そうですね。活かせたらいいですよね。最近、結構思いますね。自分にはこれから何ができるかと。グリーンカードを取った末には、もうちょっと日本に帰る機会も増えるかなと思うんで、そこから何をやるかですね。それを今考えている時期ですね。全然答えは出てないんですけど、今、ゆっくり答えを出していこうかなという状況ですね。何かで見せられる機会があればぜひ見に来てくださいね! |
TDM | : | 7年前のインタビューでは、「ホントの友達を見つけるのが難しい街」と言っていましたが、現在はどうですか? |
Sohey | : | 言ってましたね(笑)。もちろんフェイクな人たちもいますが、そういう状況の中でできる友達は、かなり絆が強いですね。 |
TDM | : |
食事や体のケアで気を付けていることはありますか? |
Sohey | : |
このツアーに回っている時は、「フィジオ」という、もし身体に何か異常があればすぐ見てもらったり、メンテナンスをしてくれる人がずっとツアーについてくれて、普段からストレッチしてくれたり、そういうケアもちゃんとしてくれてます。ツアー以外だと、自己管理ですよね。ストレッチしたり、ジムにも行っていますね。そこは結構頑張っています。お酒は大好きです。あとは、睡眠も大好きです。意識して取るだけ取りますね。仕事でも徹夜はないですね。遊びと仕事のけじめは大事です。抜くときは抜いて、楽しまないと。気を張りっぱなしだと壊れちゃうんでね。 |
TDM | : | オフの時間は何をしていますか? |
Sohey | : | ツアー中だと、街を歩いて散策することが大好きですね。いろんなところ歩いて、おもしろそうな店あったら入って、適当にぶらぶらするのが好きですね。あと食べ物、ぼく食べるのが大好きで、なんでも食べます。でも、どこへ行ってもやっぱ最終的に食べたくなるのは日本食なんですけど(笑)。 |
TDM | : | ここまでの大きなステージに導いたものは何だと思いますか? |
TDM | : |
今までで、悔しかったことはありますか? |
Sohey | : |
やっぱオーディションに落ちた時ですね。実は、マドンナの前回のツアーの時、オーディションを受けにニューヨークまで飛行機で行ったんですけど、落ちたんですよ。結構悔しかったです。だから、いまこうして周れているのはおもしろいですよね。今だからこうなっただろうし、前回だったらまた違っただろうし。タイミングですよね。 |
TDM | : | 目標の描き方、参考になる人は多いと思います!等身大の素敵なインタビューありがとうございました! |
interview by AKIKO
’16/06/07 UPDATE
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